八郷の暮らしの一年
自然と共に生きると、心が豊かになると言われています。
では、自然と共に生きるって、どんなことでしょう?
自然は大切だから、人間はなるべく手を
触れない方がよいのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
実は、人間がある程度手を入れた山の方が、
虫や動物が多かったりします。
まずは、自然をよく知ることです。
草木や花、昆虫、鳥類、哺乳類などの生物や、
それら同士のかかわり、
水がどこから来てどのように動くのかなどを知ると、
それまでは見えなかったものが見えてきます。
例えば渡り鳥のツグミが里に降りてくると、
春がすぐそこまで来ていることがわかります。
そしてふきのとうが出ると、もう春だと
自信を持って言えるようになります。
自然をよく知ると、
自然からの "呼びかけ" に対してより敏感になります。
移ろう季節や身の回りの生き物が、
私たちに声をかけてくるのです。
例えば杉の林が
「おーい、篠竹が茂って苦しいよ〜!藪を刈ってくれ〜」
とか、
あるいはタヌキの溜めフン*が
「ここを一家の縄張りにしちゃうぞ。
マダニが出るから気をつけろ」とか。
*タヌキが家族で同じ場所に糞をする習性を溜め糞という。
この自然からの "呼びかけ" に対して、
昔の人はちゃんと "応え" ていました。
「どれどれ、少し草刈りをして風通しを良くしてやろう」
時にはすんなり行かず、頭を使って
試行錯誤することもあります。
すると自然はまた、返事をしてくれます。
裏山から気持ちのいい風が吹いて、
家の湿気がなくなったり、
厄介な害虫がいなくなったり。
こうして人間は、自然とのやりとりを繰り返すうちに、
自分も自然の一部であるのだという自覚が
どんどん強くなっていきます。
何やら大きくて、たまに恐ろしいけどおおらかな
ダイナミズムの中に、自分は在るのだとわかります。
自然が自分を肯定してくれるわけでも、
否定してくるわけでもありませんが、
もとより自分の居場所がここにあったんだと
気づくことができるのです。
これこそが、自然が人間に与えてくれる
自己肯定感なのではないでしょうか。
さて、自然との暮らしに登場するものを
8つの季節ごとに表したのが、上の図です。
八郷留学のプログラムでは、参加者の皆さんに
これらの暮らしを実際に営んでもらいます。
図をクリックすると、各季節がそれぞれどんな季節なのか、
またその季節に人間は自然に対してどう働きかけるのかを
八郷留学なりに解釈したものをご覧いただけます(現在準備中)。